家族はうまくいかない?家族・夫婦問題解決のために点検したい3つのこと
「幸せな家族」「温かい家庭」などという言葉は当たり前のように使われますが、本当に温かいだけの家族や、幸せだけしかない家族というものはありません。
一見幸せそうに見えたとしても、その内部は複雑に絡み合い、日々さまざまな問題や課題に直面しているものだと思います。
自分が生まれた家庭の中での軋轢に悩んでいる人、そしてこれから家族を作っていこうとしている人、また今まさに親という立場で家族関係を構築している最中の人。
どんな立場であっても共通する部分はあると思いますが、ここでは主に現役子育て世代で親の立場として奮闘にしている方に向けて
家族関係がうまくいかないときに点検したい3つのポイントについてお話します。
家族関係がうまくいかないとき、点検したい3つのこと

家族がうまくいかないときには「表面的な事象」にプラスして「根底にある心理的課題」にも目を向ける必要があります。
①お互いにどの程度関心を寄せているか?
家族とは、長い期間毎日顔を合わせている身近な存在です。そのため「相手のことは何でもわかっている」つもりになりやすいもの。
しかし、関係をよくするための関心を寄せられていないこともあります。
そもそも、関係をよくする関心とはどういうことでしょうか。
相手の言動や様子に注意を向けてさえいれば関心を寄せていることになるかというと……そうではありません。関係をよりよくするためには「相手の関心に関心を寄せる」ということが必要です。
相手の関心に関心を寄せるってなに?
まずは、家族が何に関心をもっているかを知る必要があります。これは日常の会話や些細なそぶりからわかることです。
- 相手が何を考えているのか?
- 何を見ているのか?
- 何が好きで何が嫌いなのか?
- 何を重要視しているのか?
などなど、注意深く見ればわかる「相手の様子」にまず注目します。
それに対し「それはどうしてなのか?」と興味を持つこと。それが「相手の関心に関心を寄せる」ということです。
- この人はなぜこういう行動をするのか?
- どうしてこのような考え方をするのか?
- なぜそれが好きなのか?嫌いなのか?
このように、表面的な言動のその先を「なぜ?」と深堀していくこと。これが、関係をよくするための関心です。
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②自分の思い込みで言動していないか?
親密な関係だからこそ、自分自身の思い込みが強く作用してしまうことがあります。
心理学の分野ではベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)という概念があり、これは夫婦や親子という「より近しい関係」では特に注意したいポイントだと考えています。
ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)とは?
人の認知には、基本的な誤りがあります。
たとえば……
「この人には絶対できないだろう」「お願いしてもやってくれないだろう」と、家族に対して期待することをやめてしまったり、あきらめてしまったりすることがあります。これは自分自身の過去の経験や体験からくる「決めつけ」かもしれません。
また「以前も同じことがあったから今回もきっと同じだろう」と思い込んでしまうこともあります。一部分だけをみてすべてを決めてしまうような思考は「見落とし」に当たります。
他にも「この人はいつもこうだ!」と一部分の欠点をみてすべて否定してしまう「過度の一般化」、小さな出来事を大げさにとらえてしまう「誇張」、自分のせいで相手が不機嫌であると思いこむ「誤った価値観」などがあります。
- 決めつけ
- 見落とし
- 誇張
- 過度の一般化
- 誤った価値観
人の認知にはこのような「基本的な誤り」があることを念頭に置いてみてください。
距離が近い相手だからこそ、自分の考えを客観的に見ることができず、誤った認知をしてしまうことも非常に多いです。
認知はその人の過去の経験や記憶から形成されています。
自分の認知の基本的な誤りに気付くためには、自分の生育環境や親子関係を振り返り「自分のできかた」を辿ることも必要になるかもしれません。
③相手は自分と全く違うことを理解しているか?
家族という親密な関係だからこそ、忘れやすいこと……それは「相手と自分は全く別の人間である」という考え方です。
夫婦は特に、お互いの違いによってすれ違ったりぶつかったりしやすい関係です。男性と女性では、考え方も感じ方も行動パターンも異なります。脳の作りが男性と女性とでは大きく違っていること、得意なことや苦手なことも男女ではそれぞれ大きく異なっているのです。
もちろん人には多様な個性があるので、性別でひとくくりにすることはできません。しかし、男性と女性で傾向が異なりやすい面があるのは事実です。
また、同じ屋根の下で生活していても、人の考えていることと自分の考えていることは、日々全く違うということも重要視しておきたいところです。自分が考えていることを、家族も同じように考えていることはほとんどないといっても過言ではありません。
当たり前のことではありますが、家族という最も身近な存在になると「違い」の部分をお互いに忘れてしまうことがあるのではないでしょうか。
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家族はうまくいかなくて当たり前、問題があって当たり前?

家族はうまくいかなくて当たり前……ともよくいわれます。でも、うまくいかないものだからあきらめてよい、ということではありませんよね。
どうにか問題を解決したい、課題をクリアしたいと思っているのであれば、問題から逃げずに向き合い続けるしかありません。
ここで重要になるのは「問題が起こる」=「悪いこと」ではないということ。
問題が起こったときには、その原因を探り、解決するために工夫したり努力したりすることが必要になります。
このときに、相手への接し方や関心の寄せ方、そして自分自身の思い込みや、誤った認識を振り返ることで、今まで見えてこなかったものが見えてきたり、問題解決の突破口がわかることもあります。
表面上問題のない家族
表面上問題のない家族は、実はとても危険であるという見方もされます。
問題がないように見せていたり、問題に蓋をして見て見ぬふりをしたりする……そのツケが溜まって、やがて隠し切れないような大きな問題に発展し一家離散に陥るのです。
意見がぶつかり合うことを避け、本音を言い合わない家族関係は、表面的には何事もないように見えることがあります。
しかし、目的合意がされないままただ同じ屋根の下で暮らしているだけという、仮面夫婦・仮面家族になっていくケースは少なくないのです。
さらに、その歪を調整するために子どもが犠牲になることも少なくありません。全く違う人間同士が密に関わり合いながら暮らすのは、実はとても大変なことなのです。
表面上なんの衝突も起こらない家族は、実は大問題を眠らせているのかもしれません。
目の前の問題は、家族機能や自分自身の見直しのきっかけ
今、自分の家族の問題で頭を悩ませているのであれば、それは家族機能や自分自身の作られ方を見直すきっかけに立たされていると考えてみましょう。もちろん、家族のだれかひとりが必死に向き合うだけでは、問題解決は難しいです。
異変に気付いた人が、それを家族で共有する「問題提起」の役割を担ったと考えてみてください。そのためには、本音を言ったり、自分の感じたままを主張することも必要になります。
今起こっている問題に対して一石を投じられないのであれば、それが自分自身の課題なのかもしれません。
家族関係に限ったことではありませんが「問題が起こったから大変なことになる」のではなく「問題から逃げようとすることで大変な状況に追い込まれる」のではないでしょうか。
親の役目は、問題に真摯に向き合うこと

家族関係は常に変化し続けるものなので、定期的に新しい問題や課題がやってくると考えましょう。その都度、お互いに課題が生まれ、それを攻略していくのです。
そうすることで、夫婦や親子関係はよりクリーンなものになります。向き合い続けることで、お互いに成長していくのは事実ではないでしょうか。
問題に向き合った結果がどんなものであっても、全力を尽くした結果であれば後悔することはきっとありません。「臭いものに蓋」をすることだけは避ける。これが親としてできるただひとつのことだと考えています。
子どもを守ることや、家族のためにできることは、常に課題と向き合い、問題に突入していく勇気を出すことです。