子どもにやる気・意欲がない?子どもが自然と動きだす「ポジティブな記憶」
子どもにやる気が見られない。意欲が感じられない。
やる気スイッチでもあって、ポチっと押せれば楽なのに……
そんな風に頭を抱えたことはありませんか?
子どものやる気を出させたい。もっと意欲的に物事に取り組んでほしい。
こんな思いを抱く親御さんは少なくありません。「子どものやる気を伸ばすためのコツ」なんてものを紹介した記事もたくさん目にします。
しかし、そもそも子どもは既に自分の意思をもった一人の人間であることを忘れたくないものです。
親が「こうさせよう」「ああしてほしい」と願い、言葉をかければその通りに動くものではないですよね。
まずは、人はやる気や意欲をどのようにして沸き立たせながら生きているのかを理解することから始める必要があるのです。
そこでこの記事では「子どものやる気や意欲の正体とはいったい何なのか?」という切り口で詳しくお話をします。
子どもは「機械」のように動かせるモノではない
「子どもは親の思い通りに動くものではない」のが、大前提にあります。そんなこと十分わかっている……という方もいるかもしれません。
しかし、筆者がたくさんの親御さんたちとお話する中で、気になる言葉によく直面します。
- 家の中にばかりいないでサッカー教室などに通わせたい
- 女の子なのに活発すぎて将来が心配
- 物怖じや人見知りするのでもっとアクティブになってほしい
- 興味関心の幅が狭いので、もっと様々なことに挑戦させたい
- みんなが塾に行ってるから行ってほしい
これらはやはり「親としてはこうしてほしい、こうさせたいけれど、本人にはその気がないので実現できていない希望」です。
何気ない交流の中では、本当にたくさんの「期待」の言葉が混じっています。
もちろん、単純に話のタネとして言っているだけなのかもしれませんが、言葉は無意識と深くつながっているものです。
自分が全く思っていないことは、何気なく口から出ることはないと考えます。
もちろん筆者自身も、子どもに無意識な期待をかけてしまったり、このままでは将来心配だなと感じたりすることもあります。
しかし「親の希望や夢」「親の心配」で子どもを動かそうとしても絶対にうまくいくことはありません。
仮に子どもが親の期待通りに動いたとしても、それは後々親子の信頼関係に大きな問題が残るおそれや、子どもの心身の不調となって表れてくることもあります。
親は「この子が将来困らないように今なんとかしてあげなくては」という心配で接しているつもりかもしれないのですが、実はそれが子どものやる気や意欲を奪ってしまう、本末転倒な結果に結びついていることもあるのです。
子どもは言葉でいくら指示したり、理屈を説明しても、親の思い通りには動きません。子どもは、親の小言でピッとスイッチが入るような機械ではないのです。
子どものやる気・意欲はどこからくるのか?

ではそもそも、子どものやる気や意欲はどこからくるのでしょうか。
まずは「子どもにやる気を出させる」「意欲的になってもらう」など、親主体の考えを捨てることが必要です。
そして「子どものどこに目を向ければよいのか?」「どんな関わり方をすればいいのか?
?」を考えていきましょう。
我が子の好きなこと・興味関心のあることは何?
大人も子どもも関係なく、自分の好きなことや興味関心のあることには意欲的になるし、やる気も出ます。
しかし、大人は「好きなことばかりではなく、何でもまんべんなく、バランスよくできるようになった方がいい」と考えがちです。
もちろん、苦手なことや子どものうちに学んでおくとよいことなどもありますが、その部分で尻を叩いても、エネルギーは沸いてきません。
子どもは知的好奇心による「ワクワクする気持ち」をエネルギー源にして動くものです。
適切な時期に、適切な刺激を受けることによって知的好奇心がむくむくと育ち「やる気」や「意欲」を生み出すエネルギーにします。
これを「将来必要だから」「苦手は克服すべき」という理由で推し進められても、エネルギーは枯渇するばかりです。
- 我が子は何が好きなのか?
- どんなことが得意なのか?
- それを好きな理由はどこにあるんだろう?
- 好きなことに関連するのはどんなこと?
親御さんはこのような目線に立ち、子どもの興味関心を広げてあげる必要があります。
「うちの子はゲームばかりしている」「動画ばかり見ている」という悩みを抱えている家庭もあるでしょう。でも、ゲームや動画からも興味関心を広げてあげることはできます。
- 好きなゲームが再現しているのはどんな世界?
- 登場人物で好きなキャラクターはいる?
- この動画の面白いポイントはどこなの?
子ども大人から見れば単純にゲームをしているだけ、動画を見ているだけなのですが、そこから「なぜ?」を大人が深堀していくのです。
すると子どもは、ゲームや動画を一つのとっかかりとして、新しい分野に興味関心をもち始めます。
子どもの性格や好みの傾向、得意な視点や惹かれるジャンルなどもわかってきます。
まずは、子どもの見ている世界を、大人がより深く探り「知りたい」「教えて」と関心をもって接してあげることも大切だと考えています。
「成功体験」とポジティブな記憶の蓄積

では、子どもには「好きなことだけやっていればいいよ」「自由にしていていいよ」……と放任しておけばいいの?
そんな疑問の声も聞こえてきそうですが、子どもが社会性を身に着けるためには好きなことだけしながら、だらだらと暮らせばいいわけでもないはずです。
何かにチャレンジしたり、自分の得意や好きを伸ばしたりする中でも、壁にぶち当たることが必ずでてきます。
挑戦する力や、継続して努力する力などはすべて、やる気と意欲からきていますよね。
そこで、ちょっとだけハードルの高いことに挑戦したり、警戒心や怖さに打ち勝って何かを達成することも、幼少期には大切です。
達成しやすい課題をクリアすることで、子どもは「成功体験」を詰めるようになります。
この成功体験こそが、子どものやる気・意欲の正体なのです。
ちょっとだけ高い目標設定をクリアする
子どもには、ほんの少しだけレベルの高い目標や課題を一緒に設定してあげるのが理想です。
ほんのちょっとだけ頑張れば手の届く課題をクリアし「できた」「達成した」という成功体験を繰り返すのです。
ハードルの高すぎない課題をいくつもいくつもこなすことで「自分は、頑張ればできるんだ」「ちょっとやる気を出せば達成できることはたくさんある」というポジティブな記憶を蓄積させてあげることができます。
しかし実際の子育てでは、真逆をやってしまいがちでもあります。
- そんなんで、将来困るよ
- ダラダラしていないで勉強しなさい
- もっと運動を頑張りなさい
- 部屋を片付けなさい
よくある小言の内容は、すべて「漠然としていて全体像のイメージが大きすぎる」ものばかりです。
大人の指示や小言は、子どもにとってわかりにくく、実現しにくいことがあります。ちょっと頑張れば達成できることではなく、何からどう手を付ければいいかわからないような漠然とした指示をしがちなのです。
課題が明確でなかったり、具体性がない指示や小言は、改善するための行動に移すのが難しくなります。
すると子どもは、何をすべきかわからないので何もできない、同じことを何度言われてもやる気にならない、結果また叱られる……のサイクルを繰り返し「失敗体験」を積んでしまいます。
勉強でも宿題でも、スポーツでも生活習慣でも、どの分野においても同じように「具体的な内容かつ、ちょっと頑張ればできる課題」を出してみましょう。
できたときには「よく頑張った!」「苦手なものでも挑戦したね!」と、やる気を出して踏ん張ったことを褒めてあげるのです。
年齢やその子の個性によっても、どんな課題を出すか、どんなチャレンジをすべきかは異なります。
今の我が子にはどのくらいの目標が妥当なのか、を見極めることから始めてみるのもいいかもしれません。
子どものやる気や意欲を育てるには、大人も挑戦を続ける

子どものやる気や意欲を育てるには、大人が先陣を切って背中を見せることも重要です。
子どもはあれこれ口で言い聞かせたり説明したりしても、根本的に理解できません。
歯みがきの練習ひとつとっても「ここはこうして、ああして」とすべて言葉だけで伝えるなんてことはありません。
実際に大人がやってみて、それを子どもはマネすることから始めるのです。
大人が何かにチャレンジしたり、知的好奇心を膨らませて何かに取り組んだり、勉強したりする姿は、必ず子どもに刺さります。
もちろん、子どものやる気を出させるために、大人が無理に勉強したり、挑戦するそぶりを見せるだけでは意味がありません。
子どもには、大人の「チャレンジすることは楽しい」「怖さに打ち勝ったときの喜び」などの感情を伝える必要があるからです。
親から子どもへは、目に見えない、耳では聞こえない非言語的なメッセージが伝わっているものではないでしょうか。
いくら言葉で「勉強しないとあなたが将来困るんだよ」「あなたのためを思って言っているんだよ」と説明しても、親の心の中にある感情が「不安」であれば、子どもには不安が伝わります。
どんな小さなことでもいいので、親も何かに熱中してみたり、勉強してみたりと、挑戦し続ける姿勢はやはり重要です。
親自身、挑戦することの難しさや厳しさを身をもって体感することで、子どもへの声掛けの内容も変わってくるでしょう。
挑戦し続けている親の言葉は、口だけの指図よりも深く心に染みるはずです。
子どものやる気や意欲は、いろいろな側面から育てていくもの

子どものやる気や意欲は、入学・習い事・試合・受験など、そのような節目になっていきなり出てくるものではありません。
幼少期から続く、毎日の「ポジティブな記憶」と「成功体験」の積み重ねにより、体が大きくなるように育まれていくものなのではないでしょうか。
親が子どもをどのような目線で見ているか、我が子に関心を寄せているのか、そして大人自身が今も挑戦し、人生を楽しんでいるのか……という様々な要素から影響を受けているのです。
幼少期からの積み重ねはもちろん大事ですが、この視点に気づくのは、子どもがいくつであっても遅くありません。
まずは子どものことを注意深く見ること、そしてネガティブな声掛けや体験ではなく、ポジティブな記憶と成功体験を少しずつ積み重ねるように意識してみてください。
これまで子どものどんな部分に注目していたかが客観的にわかったり、今後の親子の関わり方が変わることも、きっとあるはずです。