information  

食育なんてできない!偏食克服・手料理・親子でクッキングしなきゃダメなの?

子どもの好き嫌いが多い、決まったものばかり食べる、食べるときの姿勢や箸の持ち方などマナーが気になることが多い……

「食」について悩んでいる親御さんが多い一方、それを克服するための方法として「食育」が注目されるようになりました。

自分の家で育てた野菜を食べることで、野菜嫌いを克服! 親子で一緒にクッキングすると嫌いなものも食べられるように! 調理法を工夫すれば食べられるものが増える!

もちろん、このような取り組みをすることで子どもの好き嫌いが改善することもあるし、食事や食べ物への興味を引き出しやすくなるのは事実です。

しかし、現代の忙しい家庭の中では「食育がうまくできない」「時間をかけて手料理を作ることや、親子で一緒に料理をするのは厳しい」という状況にある場合も少なくありません。

そもそも毎日食事を用意することだけでも精いっぱいなのに、子どもが好き嫌いを克服するために、さらにひと手間もふた手間もかける……というのは、ハードルが高すぎることもあります

そんな「食」に関する悩みをもつ親御さんに向けて、そもそも子どもの好き嫌いが起こるメカニズムって何なの? という初歩的な部分から、子どもの食育で本当に大事にしたいことって何なんだろう? という本質的な部分までを、本記事で一緒に考えていきたいと思います。

偏食は、食育ができていないから?いいえ、違います

Photo by Kelly Sikkema on Unsplash

まず、なぜ子どもが好き嫌いをするのかについて、正しい知識を備えておきましょう。

子どもの好き嫌いが多い理由を、親の料理の仕方や、食事の提供方法に問題があるとされてしまう場合があります。

もちろん、まったく無関係とは言い切れないのですが、子どもの好き嫌いには「体の仕組み」が大きく関係しているのを知っておきたいです。

子どもの好き嫌いは、自分の身を守る働き!?

小さな子どもほど、味覚の発達は未熟です。赤ちゃんの離乳食のシーンを思い出してみてください。おかゆやかぼちゃ、にんじんなどの比較的甘みがあって食べやすい食材でも、最初は「べぇ」っと吐き出すことがありますよね。

これは、子どもの味覚や感覚が「危険かもしれない!」と判断するからなんです。今まで、母乳やミルクしか口にしなかった赤ちゃんが初めて出会う味や触感に驚き、警戒しているのです。

また、子どもは苦みやえぐみの強い食材を嫌がります。なぜ甘味や塩気などは受け入れるのに、苦味はダメなのでしょうか。

それは「苦み」という味には毒が含まれている危険性があることを本能的に知っているからなのです。

天然の毒には、ほとんど例外なく苦味がありますので、人間は本能的に「苦み」を避けようとするものだというわけですね。

現代では天然の毒などに触れる機会はありませんが、赤ちゃんが洗剤や化粧品などを口にしたとき、強い苦味を感じて吐き出し、これ以上口にしようとはしなくなります。

また、酸味も小さな子どもは嫌がることがあります。腐った食べ物、お腹を壊す危険性のあるものには「酸味」が含まれているためです。これも、自分の身を守るために避けるべきだと本能的に知っているから。

味を強く感じること、味の違いをわかることは、人間が「自分の身体に入れていいものなのか?」をしっかり判断しようとしている証拠です。

そのため、好き嫌いとは単純な「わがまま」ではない、ということをまずは親が理解してあげる必要があります。

味覚が敏感な子・警戒心の強い子どもと、食の好き嫌い

Photo by Colin Maynard on Unsplash

好き嫌いの多い子は、味覚が敏感です。舌の上にある小さな粒々の中には、味細胞と呼ばれるものが入っており、私たちはそこで味を感知しているのです。

しかし、人によってこの味覚の感じ方は大きく異なります。

大人がいくら食べやすいように調理したり、味付けを工夫しても、味覚が敏感な子どもは「まずい」「苦い」と言って受け付けないこともありますよね。

これは、年齢やその人の感覚によって、味の感じ方が全く違うためです。

誰もが好きな甘いスイーツが苦手な人だっているし、何の変哲もないように思える食材を「食べると吐き気がする」と言う人まで様々。

元々味覚が未発達な子どもとなれば、さらに味の感じ方は多様化するのです。

また、警戒心の強い子やこだわりの強い性格特性をもっている子は、食事も偏りやすい傾向にあります。

食べたことのないものは、どんな味や食感がするのかわからないのでとても怖く感じます。以前食べたものと色や形が似ていると「きっとあの味なのではないか」と思って警戒します。

大人でも、知らない国の料理を食べるときは、未知の感覚を体験することになるので「怖い」「嫌だな」と、警戒することがあるのではないでしょうか。

このように、好き嫌いは子どもの「不安」や「警戒心」と深く結びついているので「今すぐ改善!」「すぐに克服!」と促すことは無理強いになりかねません。

「食育」とは手料理に熱を込めることではない!?

Photo by W on Unsplash

子どもの好き嫌いは、簡単にはなくならないことが多いです。年齢とともに、苦手が増える子もいます。

ここまで読んだ中で、促し方を間違えると子どもの食材への警戒心をさらに高めてしまうおそれもあることを理解していただけたのではないでしょうか。

「じゃあ食育って、一体何なの?」「子どもの好き嫌いは放っておけばいいの?」そんな疑問が聞こえてきそうですね。ここでは、子どものための食育って何なのだろうかという初歩的な部分を考えてみようと思います。

そもそも食育とは?

食育とは、子どもに「食べ物や食事は、人が生きる上で大事な役割を担うものだよ」ということを教えるためのものです。

食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎となるべき
ものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて、「食」に関する知識と「食」を選択す
る力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの

食育推進施策等の現状 – 農林水産省

この文章を読んでみて「なんだか難しい」「ややこしい」と感じる人は少なくないのでは。

つまり、これだけのことを幼児期のうちにすべて身に着けることはできないのです。少しずつ、長期的な視点で食事に向き合っていけば大丈夫なのです。

さらに、子どもが成長すれば食事は家庭だけでとるものではなくなります。保育園や幼稚園に通えば給食やおやつがが始まります。家では食べなかったものも、園では食べるようになることも多いですし、家では出せない食材の味を園で覚えてくることも多くなるでしょう。小学校に行けば、給食メニューの幅もさらに増えていきます。

そして、家庭以外の場所で食に関する学習や発見ができる場も、増えています。

  • 畑作業
  • 野菜の観察
  • 社会科見学
  • イベント
  • 栄養士を招いての授業

食にまつわる学習も、この先さらに幅を広げます。家庭での食事も確かに大切にしたいものですが、それを提供する親御さんが苦しくならない程度に構えることも必要なのです。

食育は、家庭の食事がすべてではありません。地域や友人、親せきなど様々な人の中で「食」の記憶を培っていくものなのではないでしょうか。

母親の手料理、家庭での取り組みが、子どもの生涯的な食を支えるわけではない、ということも知っておく必要があると考えています。

家庭の食育で困ったら?これだけは押さえておきたい3つのこと

Photo by Tanaphong Toochinda on Unsplash

食育とは、毎日の食事の中で「子どもにプラスの記憶を作ってあげる」ことだと考えています。

この時に大事なポイントを3つに絞ってお伝えしますので、ちょっとだけ意識してみてください。

1.なんでもよく食べる!を目標にしない

昔から、家庭や園、学校で「なんでもよく食べる!」「好きなものだけでなく嫌いなものもしっかりたべる!」という目標を掲げられてきたと思います。

しかし「よく食べる」「しっかり食べる」という言葉は非常に漠然としており、どの程度食べられればいいのか、どのくらい頑張ればよいのかが不明瞭です。

そこで、その子や家庭ごとに独自の小さな目標や、ルールを作ってみてください。きっちり決めなくてもいいです、親御さんに余裕のあるときだけにしてもいいでしょう。

  • 嫌いなものは1口だけ食べればOK
  • 1枚・1粒・1個でもOK
  • 嫌いな食材が多いときは、1種類だけ残してもOK
  • 大皿に用意し、自分で好きな量をとらせる
  • 頑張ったらデザートのご褒美を少し増やす  など

まずは子ども自身に食べる量を決めさせたり「残してもいいんだ」という選択肢を与えるのが有効な場合があります。

「食べなくちゃダメなんだ」「食べないと怒られる」という不安や焦り、プレッシャーを感じると、食事自体が嫌になります。

座って食べなくなったり、遊びだしたりと別の悩みに発展することもあるので、目標は小さく、スモールステップであることが重要です。

2.親の「不安」で食べさせようとしない

親御さんが「食べないと栄養不足になって困る」「せっかく作ったのだから食べてくれないと」「お願いだから食べて……」という不安や悲しみを感じるのは当然のこと。筆者も、食べないとわかっていながら野菜を煮たりゆでたりするのは、とてもつらかった記憶があります。

しかし、親の不安や悲しみを説明しても、子どもはおそらく苦手なものを食べようとしないでしょう。悲しいかな、親の苦労も心配も、子どもの味覚や心には無関係だからです。

また、不安や焦りなどの気持ちから「いい加減に食べなさい」「食べないと背が伸びないよ」などと、マイナス感情を与える声掛けをしてしまうことも少なくありません。

やってしまいがち、言ってしまいがちな促し方ですが、マイナスに残ることはあっても、プラスな記憶として残ることはありません。

3.食事内容よりも、食事の雰囲気を重視する

食育の基本は「食事は人の生活にとって欠かせないものだ」ということを教えるためのものです。ここで忘れてはいけないのが、人が生きる上で大事なのは、朗らかで、楽しく、心身共に健康的であることです。

いくら手の込んだ料理や栄養たっぷりの食事であったとしても、食事中の空気がポジティブな雰囲気でなければ食育としての意味を成しません。

食事内容よりも、食事中の雰囲気を重視する方が子どもの心身にはいい影響を与えます。

当然、毎日カップラーメンやファーストフードという極端な食事では心配ですが、豪華でなくても、栄養バランスが少しくらい偏っていても「お父さん、お母さんが笑って食べている」「みんなで一緒に食べるのは楽しい」と理解できることの方がよっぽど重要なのです。

嫌いなものもがまんして食べられる……でも、家庭の食事に対して良いイメージを持てないなら意味がありません。

静かに座ってマナーよく食べられても、緊張感いっぱいの張り詰めた空気の食卓では「食事は楽しいし、自分にとって大事なもの」だとは思えないのです。栄養満点の食事を用意しても、子どもがひとりで黙々と食べるだけでは、味を感じられないこともあります。

完璧な食育ができなくてもOK。まずはポジティブな記憶の積み重ねから

Photo by Jimmy Dean on Unsplash

そもそも完璧な食育、完璧な食事を目指そうとしなくてもいいのです。まずは、子どもの好き嫌いの仕組みを理解し、自分の子どもがどんなものに対して苦手意識があるのかを傾向としてつかんであげましょう。

そして、余裕のある時にスモールステップを飛び越えられるよう促してあげてください。

そんな中で「食べられた」「苦くなかった」「美味しかった」「楽しかった」「嬉しかった」などのポジティブな記憶を蓄積していくとよいです。

なんでも好き嫌いなく食べることも、もりもりたくさん食べることも、食事のマナーをしつけることも確かに必要です。

しかしそれだけではなく、子どもが「食事は楽しい」「食事をとることが好きだ」と思えるようにしてあげることが、本来の食育なのではないでしょうか。

関連記事:シンプルで大きな武器!子どもと一緒に笑うことで起きるたくさんのメリット

関連記事:ママだって褒められたい。毎日の家事育児、もっと認められたい。

この記事を監修している人

SFR代表理事:鶯千恭子(おうちきょうこ)

精神保健福祉士●保健師●養護教諭1種●心理EMDRトレ他

保育士や子育て中のお母さんたちへの講演実績多数。

「心育て」「人格形成」のスペシャリスト。