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落ち着きがない、走り回る…子供の多動性は「問題行動」ではない!

いつもじっとできない子供に、毎日もうヘトヘト……。いくら外遊びをさせても、家で静かに大人しくしていることはほとんどない。飛んだり跳ねたり走り回ったりして、家の中はグチャグチャで傷だらけ。

大人しいのは、テレビや動画を見せているときくらいなものです。動く映像を見せていれば多少静かになるけれど、見ているときも体をモゾモゾ動かしたりゴロゴロ転がったり……本当に落ち着く瞬間がない。

多動性のある子どもを持つお母さんお父さんは、本当に大変ですよね。

じっとしない子供にイライラが募っていませんか?

やんちゃに動き回る、少しの間もじっとしていない子を見て「うちの子大丈夫?」と思ってしまうお母さんも少なくないでしょう。

疲労感や不安感が高まると、その感情は子どもに向いてしまいます。少しも静かにしていてくれない子どもにイライラが募り、怒鳴ったり手を上げたくなったりすることもあるかもしれませんね。

ここでは「うちの子、このままで大丈夫なのかな」という不安や「どうやってこの子と付き合っていけばいいのか……」「私のしつけが悪いのかも」と途方に暮れているお母さんに向けて

多動性と平衡感覚」のお話をしたいと思います。

じっとできない原因は平衡感覚の未熟さにある

平衡感覚(へいこうかんかく)とは、身体の方向や傾きを認識するための感覚です。

簡単にいえば「今自分の体がどこを向いているか」「どのくらい傾いているか」「どう動いているか」をわかるために、情報を集める機能です

  • 常に体の一部が常に動いている
  • 高いところから繰り返しジャンプし続ける
  • いつもソワソワしていて、大人の話に集中できない
  • 何度言われても突発的、衝動的に走り回ってしまう
  • 大人の身体によじ登る
  • おんぶや抱っこ遊びをせがむ
  • 座ってじっくり作業する遊びは苦手
  • 体をまっすぐの姿勢で保つことが難しい
  • テレビや動画の最中も転がったり揺れたりしている

多動性のある子どもの特徴として、日常的にこのような姿が見られます。(これがあるからと言って、多動性の発達障害であるという意味ではありません)

このような姿を見ていると、一見「親の話を聞いていない」「落ち着きがない」「だらしない」「言うことを聞かない」といった悪い印象を受けるのではないでしょうか?

見ていて不安になったり、イライラさせられたりもしますよね。

しかし、これは「体の方向や傾き、動きが今どのような状態であるか」がわかりにくいため、自分で刺激を与えてしまっている状態な可能性があります

自分に刺激を与えることで、足りない感覚を補っている

このような子どもたちは、自分で動き、あえて刺激を与えることによって、足りない平衡感覚を補っているのです。

「じっと静かに座っているべきところでも、言うことを聞かない」のではありません。何度注意してもやめないのは、わがままや親への反発でもありません。

動きを加えて刺激を得ないと、自分の体がどういう状態にあるのか把握できず不安なのです。

言葉での指示を理解しにくく、不安

多動性をもっている子供は、耳からの情報をうまく処理できないことがあります

私たちの生活は、声の指示であることが大半。しかし、耳からの情報をうまく記憶したり、それを実際の行動につなげることが苦手です。

すると「ルールがはっきりとわからないまま進んでいく」ことへの不安感が出てきます。聞いていない、聞こえていないのはありません。耳に入ってきた音を「情報」として脳に送るのが苦手なのです

生活の中では、その子個人の感覚への刺激が足りていないことが多いです。一方、入ってくる情報の処理が追い付かないことで不安が倍増します。

そんな状況下では「ひとつの事柄に注目する」ということ自体が難しくなります。雑多な音が混じる場所、周囲で人が動いている集団の中では、入ってくる情報が多すぎて集中できないことも。

不安をうまく発散できていない状態になることで、決められたことができない、周囲と一緒の行動がとれない、指示を聞けないなどの「問題行動」とみられてしまう状況に追いやられてしまうのです。

同じ姿勢を保つことが難しい

多動性のをもっている子どもは「同じ状況を維持する」こと「同じ姿勢を保つ」ことが難しい傾向にあります

  • 親が話し始めると、急に机に突っ伏して顔を隠したり伏せたりする
  • 座っていても足をバタバタと揺らしたり、背中を前後に揺らしたりする
  • 買い物や用事などで「となりで待っていて」と言ってもどこかへ走って行ってしまう

じっと座る、じっと立って待つ、というような同じ姿勢を保つことは、平衡感覚の弱い子供にとってむずかしいです。

しかし、そんな子どもの特徴を知らない周囲の人は「やる気がない」「なまけやすい子」「言うことを聞けないわがままな子」という評価をすることも少なくありません。

しかし実際は、そうした誤解や不必要な叱りつけの言葉が余計に子供を混乱させ、不安になり自信ややる気を失ってしまう。悪気はない、むしろ本人も困っている可能性がある……ということを徹底的に理解することが大事ではないでしょうか。

じっとできない子供への対処方法

まず、多動性のある子供は、本人も不安を抱えているということを前提に見てあげたいですね。

一見「問題行動」と思えることにも原因があり、決して「親の言うことを聞きたくない」というわけではないことを理解してあげましょう。  

子供はお母さんやお父さんが、自分に対してイライラしているのを感じると、言葉にはしなくてもつらい気持ちがするものです。本人が一番困っているのでは、という視点をもつと、子供の見方が大きく変わるはずです。

ある程度は許容する

子供が走ったりじっとできなかったりといった行動はよくあること。じっとしていないのは、好奇心旺盛な子供時代には当然のことでもあります。男の子であれば尚のこと、また女の子でも活発な気質をもっている子は多いです。

イライラして「またそんなことして!」とすぐに怒鳴らずに「理由があるんだな」と親がいったん受け入れてあげる姿勢はとても大事です。

その上で、公共の場でやってはいけないこと、マナーやルール、危険なことへの注意などを教えるという順序が大事になります。

大事なことを教えるときは、周囲に刺激がない状況で、できれば1対1で落ち着いて話せるように配慮するとよいです。

運動不足にならないよう注意

多動性のある子どもは、そうでない子よりも運動量を多くしてあげることも必要です。

日常生活では、その子の欲するレベルの運動量に達していないことが多いため、ストレスを溜めないよう体をしっかりと動かして適度な刺激を与えてみましょう。運動不足を解消するだけ落ち着き始める子もいます。

刺激が伝わる遊びを取り入れる

公園にある遊具で有効なのは、ジャングルジム、滑り台、上り棒、うんていといった刺激を感じやすい遊具です。

じっとしていない子は、砂場で黙々と何かをつくったりすることは少ないかもしれません。そして、次から次へと遊具に飛びつき、ひとつの遊びが長く続かないこともあります。

しかし、それもその子が刺激を欲している証拠です。それによって、本人は「楽しさ」だけでなく「安心感」を得ていることもあるのです。

お金をかけなくても、日常生活で刺激する工夫

外に遊びにけないときは、家の中でお金をかけずに刺激を与える遊びを取り入れてみてください。

とても簡単で、今日からでもすぐにできる方法ばかり。もしかすると「こういう遊び、確かに好きだなぁ」と思い当たることもあるかもしれません。

  • ふとんのうえでごろごろ寝転ぶ⇒体のパーツイメージの強化
  • 回転椅子、事務椅子でくるくる回る⇒回転する動き
  • 子供をシートの上に乗せ、引っ張る⇒前後の動き

感覚刺激には「トランポリン」がおすすめ

トランポリンを使った運動は、脳幹にほどよい刺激を与えることができます。習慣として取り入れると、言語の発達や運動機能の改善に効果があるとされているのです。

体幹が弱かったり、運動が足りず刺激不足になりやすかったり、発語が遅かったりする場合にもおすすめ。

家庭用トランポリンは低価格で質の良いものが売られています。ちなみに当メディアの編集部2人も、自宅にトランポリンを導入しています。

未診断でも、平衡感覚を鍛えるのにはメリットがある

子供の発達はグラデーションであり、じっとできない、落ち着きがない子=ADHDである、と決めつけることはできません。

知的発達に問題がなくても、逆に知能が高くても、平衡感覚が未熟な場合もあります。焦らずにじっくりと見極めることが必要です。

一番大事なのは、その子の得意不得意を把握すること。怒る前に子供をよく観察して、得意なことをちゃんと認めて自信を育てることがとても大切です。

思い切り身体に刺激を与えてから、じっとできるよう促すこと

多動性をもっている子供は、どうしても「じっとして、静かに話を聞いてから運動する」という流れは苦手です。

感覚を刺激するために、運動で発散しストレスを軽減してからじっと静かに作業するという流れの方が合っています。机上作業やお話を聞く前に、思い切り走ったり遊んだりすると落ち着きやすいのです。

軽い多動状態であれば、家で平衡感覚を鍛えるだけでも変わってくることがあります。不安になりすぎたり、自分のしつけの方法が悪いのでは……と考えたりしないことも大切ですよ。

学校や集団生活において支障をきたすほどの場合は、適切な支援(療育的支援、作業療法OT)を受けることも視野に入れるというように考えてみてくださいね。