information  

自閉症の子供の「そーっとする」ができない理由と力加減の教え方

お手伝いをしてくれるのは嬉しいけれど、食器をガシャーン!と投げてしまったり、優しい力加減が分からずお友達をドンっと押してしまったり…。おもちゃ箱へお片付けする時も、投げつけるように入れてしまうこともあるでしょう。

「そっとしてね」「優しく片付けてね」と伝えても、自閉症の子供たちは私たちができる「暗黙の了解な力加減」が理解しにくく、上手に取り入れることがなかなか難しいものです。

では、どうやって教えいけばいいのでしょうか。

自閉症の子供への力加減の伝え方

まずは溢れる力を使わせてあげて

まず頭に入れておくべき大事なことがあります。それは、「自閉症の子供たちの持つエネルギーは、大人の想像をはるかに超えている」ということです。私たち大人が持っているパワーのコップがマグカップほどだとしたら、自閉症などの特性のある子供たちが持つパワーの容器は大きなバケツほどである、と言いましょうか。

ありあまるエネルギーとパワーを持て余している状態の子供たちは、「そーっと優しく」というバランスを取ることがむずかしいのです。つまり、思い切り走り出した機関車に突然ブレーキはかけれない、ということと同じなんですね。

ポイントは、「優しい力加減」の前に「その子供が持つめいっぱいの力を使わせる」ということになります。

力加減がうまくなるための遊びをしてバランスを取らせる

優しくしなければ成立しない場面は、日常に結構たくさんありますよね。

  • 食べたあとの食器やおもちゃの後片付け
  • お友達との関わり
  • 動物とのふれあい
  • やわらかい食べ物を手で食べるときの力加減
  • えんぴつやクレヨンを紙にあてるときの力加減

力任せにしてしまうとうまくいかないことは、できる限り第二ステップとするのが望ましいでしょう。その前に、子供が思い切り力を使えるよう工夫してあげることで有り余るパワーの発散ができ、「力加減のバランス」を覚えていくことができます。

  • 「おすもうさんごっこ」で思い切り互いを押し合う
  • 重いものを引っ張ったり、押す遊びをする(重いものを運ばせるのは危ないのでNG)
  • 大人が足を持って支え、腕の力で前に進む遊び(腕立て伏せの格好で進む)

本人が「思いっきり力を使っているかどうか」を見て、引っ張ったり押したりする動きをしてから、徐々に優しい力の入れ方を教えていくのが効果的です。

言葉で説明せず、必ずお手本を見せる

ある程度力の発散をさせてから、次に実際にどういう風にすれば乱暴にならないのかを見せていきます。たとえばおもちゃをおもちゃ箱に入れるときは、音がたたないように優しくいれるのだということを目の前で見せて教えてあげましょう。言葉で教えるより、視覚的(動作)で見せる方が飲み込みが早いはずです。

そして実際に「やってごらん」とできるまで繰り返し教えます。うまくできた時は、大げさなくらい褒めて「そうそうそう!できているよ!」と言って大喜びしてあげてください。その「こうすると褒めてくれるんだ」という体験の積み重ねで、乱暴にしない方が良いのだ、と覚えていきます。

ポイント:「優しく」や「そーっと」の言葉の意味がわからなくても、動作的にできていればOK。

やりたくなさそうな時は、好きな物を使う

うまくいかない場合、何度もしつこく練習するのは難しい時もありますよね。本人もやる気がなくなって集中も途切れやすいですし、楽しくないと感じさせてしまうと意識がそれていきます。ここで私がよく使う力加減の練習方法を参考までに書いてみたいと思います。

①好きな食べ物を利用する…… 私の息子は「みかん」と「ドーナツ」が大好きなので、よくこれを使って「優しく皮むきをしないと潰れてしまうよ」「ぎゅっと持ったらボロボロとこぼれて食べられないよ」ということを教えています。

みかんの場合は、一緒に皮むきをしながら子供の手を持ち、途中までむけたらあとは自分でさせています。どこから見ても実がやぶれていなければ合格!たくさん褒めています。

②失敗パターンを実演することでどうなるのかを知らせる……みかんとドーナツには申し訳ないのですが、実際に手でつぶしてみたりして「あ~あ~!潰れて食べられないね!どうしようね?」と実演することも大事にしています。

子供も大好きなものが潰れたり壊れるのは見たくありませんので、「こうなっちゃうのは嫌だな」と感じることで学んでいくでしょう。私の息子も一緒になって「あ~あ~」と悲しい顔をして、頑張ろうとしてくれます。

ポイント:「言われたことを想像する」のがむずかしいので、実際に見せる、実際に結果を知らせるということの方が納得しやすいところにあります。「大切にしないといけない」ということをわかるには、お子さんの好きな物を利用することが近道。

曖昧な表現はせず、小さな成功体験を積み重ねる

子供がパワーで溢れているのは、自閉症スペクトラムの子供たちも、どこの子供たちも、同じです。「力のバランス」は、溢れている状態では上手く取れないので、優しくするという加減を教える前にかならずある程度パワーの発散を促すようにしてあげてください。

「語るより実演」は、曖昧表現が苦手な自閉症の子供たちにとってとても大切な教え方のヒントです。すぐにうまくできなくても、徐々に「できた!」「褒めてもらえた!」という体験を積み重ね、いつのまにか優しい力加減が定着していきます。根気強く教えていってあげてくださいね。

この記事を監修している人

SFR代表理事:鶯千恭子(おうちきょうこ)

精神保健福祉士●保健師●養護教諭1種●心理EMDRトレ他

保育士や子育て中のお母さんたちへの講演実績多数。

「心育て」「人格形成」のスペシャリスト。

LINE登録はこちら↓

https://line.me/R/ti/p/%40076vxnnq