子どもの機嫌をうかがってしまう……「いい子」になろうとしてきたママへ
子どもの機嫌をうかがってしまったり、ここぞというときに毅然とした態度をとれないというお母さんは少なくありません。
何を隠そう、筆者自身がつい最近までそのような親でした。
親としての役割の中には、適度なしつけとして、子どもにとってそのときどきで必要な「壁」を与えてあげる必要があります。
でも、中には「子どもが泣いたり、怒ったりしないように機嫌をうかがってビクビクしたり、ご機嫌取りをしてしまう」というママもいます。
叱れない親、甘やかす親などと揶揄されて「悪い親の典型」のように言われることも少なくありません。
しかし、当の親自身は悪い親になりたいわけでもないし、子どもをダメにしたいわけでもないはずです。
どうして子どもは自分の言うことを聞かないのだろう……と、不安な気持ちを抱えている人も多いのではないでしょうか。
子どもの機嫌をうかがってしまうメカニズムを見てみることで「何を」「どうとらえ直し」「どう改善すればいいか」がわかるようになります。
この記事では、子どもの機嫌をとってしまう行動パターンの原因と解決策を具体的にお伝えします。
子どもの機嫌をうかがってしまうのは「いい子」をやってきたから!?

子どもの機嫌をうかがう、というのは「なるべく泣いたり怒ったりさせないように」という感覚ではないでしょうか。
もちろん、泣いたり怒ったり、癇癪を起したりすれば生活はスムーズに進みません。なるべく穏やかで、みんなが笑顔のままで過ごせるのが一番いいのは、誰もが同じ思いです。
しかし、子どもにとって「感情がネガティブな方に揺れない」というのは、少しバランスが悪いのも事実なのです。
人は、幼いころにしっかり感情を揺らして、様々な感情を「体験させる」ことが必要です。
思い通りにいかないことに泣きわめいたり、怒って八つ当たりしたり、親に反抗的なことを言ったりするのも、自然なことです。
しかし、幼いころから「怒り」や「悲しみ」「いらだち」などのネガティブな感情をしっかり表現する場がなかったり、少なかったりした場合はどうでしょうか。
「ネガティブな感情を体験するのはいいことだ」「どの感情も大事だから、ちゃんと表現させてあげなきゃ」とは、思いにくいのです。
すると、自分の子どもの感情が揺れないように、先回りするという選択をとりがちなんです。
幼いころから「いい子」のときだけ受容されてきた人は多い
私たち親世代の幼少期は、「心のメカニズム」に基づいた教育とは程遠い世界だったように思います。
子どもが泣いたり怒ったりしてネガティブな感情表現をしたとき、親もその感情を受け取るので同じように悲しくなったり、イライラしたりします。
しかし、親に「感情が共鳴し合っている」という知識がない場合、子どもの感情を抑圧したり、叱ったりしてしまうことがあるのです。
- 泣くんじゃないよ
- 怒るのはみっともないよ
- 八つ当たりするんじゃない
- そんな顔するもんじゃない
感情がネガティブな方に揺れるたびに、それを押し込められてしまいます。すると、親が困らない「いい子」でいることだけを求められたり、子ども自身がそれを目指すようになる……という現象が、本当にたくさん起こっているのです。
ネガティブな感情をしっかり揺らして、不快感情への耐性がない場合、子どもが激しく自己主張したり、泣いたり怒ったりするのに対して怖さを感じたり、どう対処していいかわからなくなる場合があります。
「いい子」の自分がすべてで、ネガティブな感情を抱くことは悪いことだから押し込めておかなくちゃ!と思うわけです。
子どもに嫌われないようにしてしまう!?
子どもにネガティブな感情を与えないようにしていると、叱るべきときに叱れなかったり、子どもに対してびくびくしてしまうことが起こります。
もちろん、癇癪を起したり子どもが機嫌を損ねてしまうことで、生活がスムーズに進まないこともあります。それを避けるために、子どもの機嫌を取ってしまうケースもあります。
しかし、中には「子どもに不快な感情を与える自分」を責めてしまうことがあるのです。
子どもは、親に叱られたり、自分のわがままが通らなければ嫌な気持ちになり、落ち込みます。親に反発して怒りを露にしてくることもありますよね。
子どもに不快感情を投げつけられたときに、自分を責めてしまうことも少なくないと感じています。やはりここには「ネガティブな感情は悪いものだ」という意識があるため、そんな気持ちにさせてしまった自分を責めてしまうんですね。
ここぞというときには毅然とした態度で振舞い、子どもに「悔しさ」「悲しさ」「怒り」「もどかしさ」などのマイナス感情をしっかり揺らして、体験させてあげることのほうが本来は大切なのです。
でも、これがなかなか難しいのも事実。反射的にやってしまうものなので、まずは自分の心のネガティブ感情への反応に気づき、受容していくことから始めなければなりません。
叱れない親、甘やかす親にならないためには?

生身の人間の心を扱うのは、とても難しいことです。誰でも最初から完璧なしつけや対応ができるなんてことは絶対にありえません。
まずは自分が子育ての何に躓いているのかを知り、そこから「では、子どもに適切な自制心をつけさせ、しつけていくには?」と、一歩ずつ前進していけばよいと考えてみてください。
ここからは、子どもの機嫌に振り回されず、適切なしつけをするために必要なことを具体的に考えてみましょう。
①叱るべきことと許容したいことを明確にする
まずは、家庭の中で「これだけは絶対にダメ」という家訓的なものを明確にしてみましょう。これは各家庭の考え方次第なので、どんなことでも構いません。
例を挙げるとすれば……
- 危険なことや危ないことはしない
- 約束やルールを守る
- 人を傷つける言葉や行為をしない
あくまでも一例なのですが「こういうことはしっかり教えていきたい」という指針のようなものをいくつかしっかり持っておく必要があります。
自分の家庭の方針がはっきりしていなかったり、夫婦間で考え方が異なっていたりすると、子どもを叱る基準は常にブレてしまいます。夫婦間ではしっかり、共通の意思決定をしておけたら理想的です。
一方、それ以外のことは多少寛大になって見逃したり目をつぶったりしてもよく、あまり厳密に考えすぎる必要はありません。
その時々で、時間の都合があったり生活をスムーズに流すために、許容できないこともありますが「子どもが不快感情を抱くのは悪いことではない」とを知っておけば、悩むことも少なくなるのではないでしょうか。
②感情の法則を理解する
感情には法則があります。感情は、一度大きなピークを迎えた後は、放物線を描くようにして自然と弱くなり、最終的には消えていきます。
ボールを空に投げたら、自然に落ちてきて転がり、最後には自分で止まります。感情もこのような物理的なものと同じなのです。
子どもを叱ったときや、わがままを通さなかったりすれば、子どもは泣くし怒ります。しかしそれは、ピークまでしっかり感じ切ったあとは自然に消えていくのです。
これは親自身の感情もまったく同じで、怒りやイライラなどのピークさえ堪えれば、その後自然に消失していきます。
このピークに親自身が耐えられない場合に、子どもに例外を許して甘やかしてしまったり、機嫌を取ってしまったりするのですね。
あるいはキレて子どもを怒鳴ったり叩いたりして感情を抑圧することも、感情の扱い方を知らない結果だということです。
感情は「感じ切ること」が絶対に必要で、親があれこれ口出ししたり何かしてあげることでどうにかなるものではありません。
子どもの機嫌をうかがってしまうなら、親自身が感情をしっかり感じる練習をしてみて

子どもの機嫌をうかがってしまう、甘やかしてしまうことに悩んでいる親御さんは、自分自身の感情をしっかり感じる練習としていくことが先決かもしれません。
感情はエネルギーなので、ある程度物理的に考えられるもの。コントロールできるものではないけれど、扱い方にはコツがあるということなんです。
こうして構造的に理解することで、子どもに対する気持ちも楽になります。
まずは、親が感情の仕組みを理解することが必要。感情の仕組みを理解するには、自分を実験台として「感じる練習」を繰り返していくのもいい方法です。
いい子の自分だけをやってきた大人は、自分のネガティブな感情を押し込んでしまいがちです。そのため、感情の揺れ、親子の感情共鳴に怖くて耐え切れないのかもしれません。
でも、大事なのは感じないことではなくて、感じても大丈夫だという体験をすることです。
決して、うまくしつけられない自分を責めるのではなく「ここからどう改善すればいいか?」の糸口を探していきましょう。前進するための方法は必ずあります。